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最高裁判所第二小法廷 昭和25年(あ)3003号 判決 1951年3月16日

主文

本件上告を棄却する。

当審における訴訟費用は被告人の負担とする。

理由

被告人の上告趣意について。

上告は高等裁判所のした判決に刑訴四〇五条所定の事由があることを具体的に示してこれを理由としてのみ申し立てることができるのである。しかるに論旨はその(六)において原判決が二重刑を科した憲法違反があると主張する以外はいずれも刑訴四〇五条所定の事由にあたらないから適法な上告理由とならない。次に右二重刑の主張につき判断するに累犯加重の制度は累犯者であるという事由に基いて新たに犯した罪に対する法定刑を加重し重い刑罰を科し得べきことを是認したに過ぎないもので、前犯に対する確定判決を動かしたり或は前犯に対して重ねて刑罰を科する趣旨のものでないから憲法三九条に違反するものでないことは当裁判所の判例(昭和二四年(れ)第一二六〇号、同年一二月二一日大法廷判決、集三巻一二号二〇六二頁)の示すところである。そして被告人の前科を考慮して第一審判決の量刑を相当であるとした原判決も前科に対する確定判決を動かしたり或は前科に対し重ねて刑罰を科する趣旨のものでないから右大法廷判決の趣旨からみて二重刑を科した憲法違反があるとはいえないのである。それゆえ論旨の(六)はその理由がない。

弁護人谷内徳久の上告趣意について。

所論は刑訴四〇五条所定の事由に該当しないから上告適法の理由にならない。

なお本件について刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。

よって刑訴四〇八条、一八五条一八一条により主文のとおり判決する。

右は裁判官一致の意見である。

(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 栗山 茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎)

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